キューバン・サルサDJのお気に入りCD紹介 シンゴ&ヒメのCuban Salsa

お気に入りCubanSalsa紹介

Cuban SalsaDJのお気に入りアルバムを紹介。

04年5月 "Immigrant Blues"

artist: Mango Blue

0405immigrantblues.jpg悔しい。

…もう一度書こう。

悔しい。

何が?って、このバンドが日本に紹介されてしまったことが。
今年初めにこのバンドの事を知り、早速アメリカから通販で注文。
初回に届いたCDが不良品で、クレーム交換の後、ようやっと手に入れたこのアルバム。
「こんなの日本で持っているのは僕くらいなものだろう♪」とほくそ笑んでいたら、
何と先日、都内某CDショップにて大量に入荷しているのを発見。
そればかりか、フリーペーパー「Salsa120%」6月号では、
レビューコーナーにまで取り上げられているではないか!?
本当は僕だけの宝物にしておきたかったバンドなのだが、
ここまで明るみに出てしまったからにはしょうがない。
ここを読んでくださっている方にも思い切って紹介してしまおう!

何でこんなに前置きが長いか、と言えば、
それはすなわち、これがあまりにも素晴らしく思い入れが強いから!
普通"DJ"混じりの活動をしている者なら、
誰でも「人に教えたくないとっておき」があるものだと思うが、
これは僕のそんな「とっておき」の一枚。
もしかしたら、過去にここで取り上げたものの中で、
一番気に入っているかも知れない。

120%誌で山口さんがお書きになっている通り、
リーダーはエクアドル人、フロントにもベネズエラ人と、他人種混合の8人編成。
どうやらサポートなど入れず、この人数でNYを拠点に活動しているらしい。
何事にもお金がかかるアメリカで活動するための、コンパクトな編成なのだろう。
通常のサルサバンドとしては、かなり小さめの人数だが、
CDを聴く限り、オーバーダブ無しなのに、まったく音の淋しさを感じさせない。
アルバム収録11曲中、6曲はLIVE録音なのだが、
この演奏クオリティーの高さ!
リーダーのAlex Alvearは、
ベースを弾きながらリードボーカルを取る実力者。
オースティン・パワーズみたいな顔で、
歌は何とも脱力感&興奮が入り交じったヘンテコなスタイルなのに、
とても同時にこなしているとは思えないほど、
演奏・歌とも、すばらしく安定しているからニクイ!
もう一人のフロント、紅一点Edith Ramirezも、
キューバ人、プエルトリコ人の熱い声の張り上げ方とはまた違った浮揚感で、
ある意味、非キューバ的「か弱い感じ」が、キューバ系サウンドと合わさって、
また何とも不思議な味を醸し出しています。
特に、この人がコーラスに加わった時のブレンド感と言ったら!
決してキューバ人のバンドには無い気持ちよさがあります。

このバンドの音を独特にしているのは、
上記の要素に加え、とにかくアレンジ力から来るものが大きいと思う。
Timbaというよりは、NG La Banda世代の影響を強く感じますが、
「キューバ風です」では無く、しっかりと「キューバンサウンド」してる。
普通、「ネイティブ・キューバ人」以外の人が作るキューバ音楽って、
「より本物のキューバ人ぽく」という方向を向いているものが多いと思います。
Mango Blueの素晴らしいところは、
そのおいしいところをしっかりと消化しながらも、
真似をするだけに終わらず、更にその一歩先まで踏み出している点。
Timba系ではもう当たり前になってきている、Funkっぽいアレンジ部にしても、
無理して今っぽくしていないのが、逆に都会的、というか。
Average white bandの名曲、"Pick up the pieces"をもじったフレーズが混ざったり、
シンセを導入するにしても、
エレピ・クラビ・オルガンのクラシックな音色だけにこだわったりするあたり、
アメリカで活動している空気とセンスを感じます。
逆に在キューバのアーティストからは、
こういう方向へのセンスは出てこないのではないか?
10/4拍子の変則ルンバ曲とかもありますが、発想はジャズ的でも、
キューバ人ラテンジャズによくある、力技系テクニカルな世界に走らず、
変拍子と気づかないほど、聴きやすくポップにまとめているのも好感。

更に素晴らしいのは、(ああ、もうこの人達を褒め始めたら止まらない!)
音楽的曲調だけでなく、歌詞の世界でも、
純キューバ産のものとは、明らかに一線を画している点。
キューバ外のアーティストでも、よく聴いてみると意外と、
「さぁ、パーティーだ!踊れ!Manos Arriba!」
「ああ、キューバ、大好きさ、キューバ!」みたいに、
自分たちの実際の環境についてではなくて、
「まるでキューバ人のような」という路線の歌詞ばかりだったりするのです。
それを聴く、同じ外国人の身としては、正直、
「じゃ、キューバに住んじゃえば」と言いますか、
「だったら、わざわざキューバ人以外のアルバム買う意味ないなぁ」
と思ったりもして。

でも、彼らの場合は、
何というか、もっと「自分たちの本当の生活に密着している」。
移民の悲哀を歌ったアルバムタイトル曲、"Immigrant Blues"でも、
"I work hard for my money, so don't you put the blame on me"とかね。
編成、曲調、演奏とも、きちんとしたキューバ音楽なのに、
全体の雰囲気はどこか、テキサスあたりで歌っていそうなパブロックバンド的匂いで、
同じくキューバ以外で暮らす者の耳には、むしろ自然に入ってきます。
ちょっと前から、キューバ人アーティストの間でも、
「Yo!」だの「Everybody Dance!」だの「I Love You, Baby」だのと、
英語フレーズを入れるのが、普通になってきていますが、
NYを基点とするMango Blueの場合、
スペイン語と英語を混ぜるのはもっと自然。
キューバ人の様に、格好つけるためでも、海外でも売ろうとするためでもない。
きっと彼らの生活では、両方の言葉を行き来するのが自然だから混ざるのだ!

Timba後の新しいキューバンサウンドを、皆あれこれ模索している現在、
より“キューバっぽさ”を薄めたり、
はたまた懐古主義に戻っていく方向で進む人達が多いのですが、
あくまでキューバの材料を使いながらも、
オシャレに次のステージへ発展していく彼らは、
「これからの新しい流れは、キューバの外からやってくる」と予感させる、
僕の中ではかなり革命的なバンド。

ここまで書いておきながら、本心では、
あまり多くの人に広まって欲しくない一枚です。

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